ピカソ
帯広美術館で開かれているピカソ版画展をおふくろと一緒に見てきました。私はヨーロッパやアメリカを中心にいろいろな美術館に足を運んだことがありますが、それほど感動したことはありません。唯一の例外は、大学生時代に訪れたスペインのバルセロナにあるピカソ美術館でした。そんな訳で、珍しく行ってみたくなったのです。
ピカソはマラガ生まれだというのに、ピカソ美術館がなぜバルセロナにあるか知っていますか? 実は、ピカソが少年時代を過ごした街がバルセロナだったのです。ピカソ美術館と名づけられてはいますが、ここには大作は展示されていません。あるのは少年時代あるいは無名時代の作品が中心です。多くは彼の両親が保存していたもの、そしてピカソ自身が寄贈したものだそうです。
私はピカソに関しては、「こんなの誰でも描ける?」なんて本気で考えていました。せっかくバルセロナに来たのだから、行かなくちゃ程度の気持ちで美術館に入ったのです。今でも記憶に残っている作品は、教科書の余白に書かれた少年時代の彼の絵やデッサンでした。とにかくそれがうまいのです。ピカソ美術館で私が学んだことは、彼の抽象的な作品の全ては確固とした基礎の上に成り立っていたということでした。
帯広美術館で今回展示された作品は版画ということで、地味な作品ばかりでした。私はなぜかピカソ美術館を思い出してしまったのですが、やはり何かが根本的に違っていました。それは建物の雰囲気でした。ピカソ美術館の建物は風格のあるゴシック建築だったと記憶しています。同じものを見ても、場所が違えば、感じ方は違うはずです。一緒に行ったおふくろは、やはり、「私には分からないねえ」を連発していました。