訃報
十勝毎日新聞のおくやみ欄で、大和昭一さんが64歳で他界されたことを知りました。大和さんは、地元を代表する写真館の経営者として有名です。私には、別の意味で、忘れられない方でした。実は、大和さんは私が教えた最初の大人の生徒さんだったのです。
ジョイを始めた28年前の生活と言えば、1日に2コマ授業をやるとほとんど仕事がない状態でした。当然、夜は仕事がありません。そんなときに声をかけてくれたのが、大和さん夫妻でした。写真館の仕事が終わる9時頃お宅に週2回出向き、それから1時間のレッスンをするのです。あの経済的に苦しい時代に、ずいぶん助かりました。それ以上にプラスになったのは、世間話でした。なにせ子ども相手の毎日で、大人の世界との接点がない頃だったからです。
大和さんが英会話を習う切っ掛けは、写真館に外国人のお客さんも来るようになったから、ということです。授業はとにかく実践的なもので、お客さんが写真館に入って来たときの挨拶から始まり、スタジオに誘い入れ、イスの座り方を教え、背筋を伸ばさせ、ニコッと笑わせる。ほとんどの表現が命令文でした。私が用意した英文を何度も何度も発音練習し、暗記してもらいました。
ジョイの外国人講師や帯広畜産大学の留学生が、大和さんにはずいぶんお世話になりました。その際には、私も必ず同行し、大和さんが額に汗を光らせ英語を話すのを陰で聞いていました。そうそう、他にもたくさん想い出があります。カナダからカーリングのチームが帯広に来たときは、黄色いハッピを着た彼らの記念写真を撮ってもらいました。デイビットの結婚式の写真だって、大和さんがシャッターを押してくれたものです。
本業が忙しくなり、2年ぐらいでレッスンは終わりました。会うたびに「今だに先生に教えてもらった表現は覚えていますよ。助かってます」と言ってくれた、あの笑顔が忘れられません。2人のお子さんもジョイの卒業生です。先日、大和さんの調子が悪いということは、息子さんから聞いていました。本当に残念です。ご冥福をお祈りします。