縁
東京で音楽関係の仕事をしている古田秘馬さんが、今日の午後、私を訪ねて来てくれました。古田さんのお父さんは、ジョイの創世記に私がとてもお世話になった方で、そんな「縁」で彼と一度東京で会ったことがあります。
みなさんはジョイが出版していた英文雑誌「ノーザン・ライツ」を覚えているでしょうか? 1980年に創刊した年刊誌で、17号で休刊になりました。実は、この地方発の英文雑誌の第3号から裏表紙に世界的な企業「アメックス」の広告が登場したのでした。当然、世間はビックリ。他の広告はほとんどが地元の会社ということで、「なぜ?」と何度も聞かれたものです。
今だから言えるのですが、古田さんのお父さんがアメックスの日本法人の副社長だったのです。ひょんなことから知り合い、私の活動を気に入ってもらいました。「同じ北海道出身者として、何かできることはありますか?」という問いに、私は「アメックスの広告をください!」と大胆なことをお願いしたのでした。たぶん、アメックスが広告を出した発行部数が一番少ない雑誌だったと思います。
今回、古田さんは東京で活躍するクリエーターと一緒に帯広で何かをコラボレートしたいと、その打ち合わせで来たそうです。「なぜ帯広?」と思わず聞いてしまいました。仲間に帯広出身者がいたのが「縁」だったそうです。なるほど。
帯広は4年制の大学がひとつしかなく、しかもその帯広畜産大学が郊外にあることから、町中ではあまり大学生を見ません。つまりほとんどの若者は大学に行くためにこの町を出て行きます。古田さんとその仲間たちが若者を巻き込みここで何をやろうとしているか、私には検討がつきません。でも、素晴らしいコラボレーションが始まることを期待しています。
ところで古田さんのお父さんは、会社を辞め、今はヨーロッパへ3ヶ月の船の旅に行っているそうです。旅に出かける前、みなさんにきっと言われたのでしょうね。「出かけるときは、忘れずに!」と。
*プロフィール
音楽家 古田秘馬 (ふるた・ひま)
1975年生まれ。慶応大学中退後、アメリカを放浪。97年、パリ・ダカールラリー参加。佐藤允彦氏、板橋文夫氏にピアノを師事。ミュージシャン・ライターとしてのキャリアをスタート。2000年より活動の拠点をNYに移す。テロ以降日本に再び拠点を戻す。CM音楽、映像音楽、レコーディング、ライブなどを精力的にこなす。現在は日本の聖地をテーマにした写真とのコラボレーションプロジェクト・Primal Gravityを発表。日本に眠る音霊をピアノと弦楽器を中心に独特の世界観で演奏する。 主なレコーディング作品に、平井堅の「楽園」(99年)、「SAKURA」(99年NY)など。著書としては同世代の生き方を追ったノンフィクション「若き挑戦者たち」(イーハトーブ出版)