テロ
7日、地下鉄、バスを標的にした同時爆破テロがロンドン中心部で起きました。これまでの調べで、死者は少なくとも50人に達し、負傷者は約700人にのぼるそうです。
昨夜からテレビに映し出される悲惨な映像を見ながら、大学生時代に行ったイタリア・ローマでの出来事を思い出していました。その夜、私はイタリア人に騙され、日本円でなんと15万円、ちょうど1ヶ月の旅行費用に相当する大金を取られ、途方に暮れていたのです。「もう、こんな町にいたくない。少しでも早くこの町をでたい。イタリア人のバカヤロー!」なんて心の中で叫びながら、ローマ駅からフランスのニースに向かう夜行列車に乗り込みました。
列車はひどく混んでいて、私が予約した席にも男が座っているではありませんか。普段は穏やかな私も、「ここは俺の席だよ!」と怒鳴り、その男を追い払いました。他の乗客がワイワイ騒いでいる中、私はひとり冷や汗を拭いながら、その夜の出来事を思い出していたのです。体はぐったり、もう動くこともできない状態でした。
まもなくすると、場内アナウンスが入りました。そして、乗客は次々と下車し始めたのです。でも、私には何が何だかまったく検討がつきませんでした。そのときほど日本人観光客を捜したことはありません。ホームで声をかけていると、乗客のひとりが「ボム」と一言。そう、爆弾だったです。前夜、ベニスからフイレンツエに向かう列車が爆破され、確か早稲田大学の学生がテロの犠牲になっていました。
1時間ほどホームで待機させられたのですが、アナウンスとともに再びホームに溢れた乗客が列車になだれ込みました。席を予約していた私は、急ぐ必要はありませんでした。そのときです。駅員が大声で叫びながら、走ってきました! まさにパニックです。荷物を窓から投げる人、泣き叫ぶ人、隣のホームに転びながら走る人。私はというと、なぜか「もうどうなってもいい」なんて諦めの境地でした。そして、ゆっくり荷物を抱え、ホームを歩き始めました。
結局、何も起こりませんでした。生まれて初めて経験したパニック状態は、いまでも脳裏に鮮明に残っています。もしあのとき爆発していたら、ロンドンでの犠牲者のように私も血まみれだったに違いありません。あるいは、21歳という若さで死んでいたかもしれません。