Mr. シャドーイングのその後
ジョイでシャドーイングと言えば、石川勇太くんを思い出します。その石川くんが、夕食をまさに食べようとしていた6時23分、オフイスを訪ねてきたのです。相変わらず、間の悪い男であることは変わりありません。電話を受け、ジョイに戻ると、笑顔の石川くんがいるではありませんか。彼は現在ボストンにある名門、バークリー音楽院で学んでいます。専攻は「フイルムスコアリング」(映像と音楽をあわせる分野)で、将来的には音楽プロデューサーを目指しているそうです。
この石川くんを有名にしたエピソードを紹介します。彼がジョイに通い始めたのは、高校3年の8月のことです。ちょうどA館が完成し、引っ越しをしていたときでした。彼の間の悪さはここから始まったようです。次に彼の口から出た言葉が衝撃的でした。「僕バークリー音楽院に行きたいんです」。英語力を聞くと、「高校に入って以来、ほとんど赤点です」。世の中には、「間が悪い」だけでなく「無謀な」人間がいるということを、私は初めて知りました。
時間もないことから、とにかく勧めたのがシャドーイングでした。まずは私の著書『英会話お決まり表現』から始めたのですが、なんと1週間で1册全部できるようになりました。CDをMDに録音し、自転車に乗りながら通学時に練習したそうです。続いて『やさしい英語で自分を語る』『自分を語る英会話』をそれぞれ1週間程度でマスターしてきたのですから、驚異でした。そして、冬の英検で2級に見事合格。高校の定期試験でも初めて80点以上とり、先生や同級生そして両親もがビックリ仰天したそうです。
最終的には、大学受験参考書の高度な英文までシャドーイングできるようになりました。そして、高校卒業時には私の英検準1級クラスで勉強していたのですから、ジョイの歴代生徒の中で、彼は最短で英語ができるようになった男です。その彼が一言、「先生のおかげでアメリカの大学に入っても英語では苦労しませんでした」とあっさり言うではありませんか。それを実証するのが、ほとんどの日本人学生が「F」をとる「小論文」のクラスで「A」を取ったことです。
石川くんが帰り際にいい言葉を残してくれました。アメリカに行って分かったのは、「発音が大事!」ということだったそうです。「へたな英語では相手にされない」と力説していました。これは「石川語録」として、私の授業のネタに使わせてもらいます。「4年のプログラムを3年で終了したい」という石川くん。期待していますよ。でも、あの間の悪さは音楽には致命的な感じがします。次回は電話入れてから来てください。