閉店セール
あるものを求め、立ち寄った文房具店でした。いつもはいないその店の奥さんが、レジカウンターに疲れた顔で座っていました。ふと後ろの壁を見ると「閉店セール 全商品50%OFF 」のポスターが。それを見ても、何ら特別な感情が起こらないのは、よくあるいつもの「閉店セール」だと思ったからかもしれません。
「実は今月で店を閉めるの」という奥さんの力ない言葉に私は驚きました。なにせこの店とは、ジョイを始めたときからの付き合いだったからです。と言っても、最近は安さに惑わされて本州の業者から買うことも多くなっていました。100円ショップの台頭もきっと経営を圧迫する原因だったに違いありません。でも、今回の廃業の直接の原因は、ご主人が脳梗塞で倒れたということでした。
70年も続いた店を閉めるというのは、きっと言葉では表わせないぐらい無念なことだと思います。その悔しさが奥さんの顔から読み取れました。こんなとき乗じて何かを買うのは非情なのか、それとも買った方が喜んでもらえるのか? 少し迷いました。でも、少しでも商品をお金に変えた方がその店にとってはいいのだろうと考え、ラックをいくつか買わせてもらいました。
どんな仕事にも最後の日は来るものです。永遠に続く企業などこの世には存在しません。電器店を経営していた私のおやじは、私が家業を継ぐ意志がないことを知ると、60歳そこそこで店を譲ってしまいました。そのときの気持ちはいったいどうだったのだろうか? ジョイに戻る車の中、バックミラーに映る私はいつになく真剣な表情だったに違いありません。
2005.02.01 22:46